世界的ロックバンドであったクイーンのメンバーであり世界的ロックスターであったフレディー・マーキュリーの半生を描いた映画“ボヘミアン・ラプソディー”が大ヒットしている。
その上映を知った時、ここ30年も映画館になんて出向いてなかった超横着者の輩が自宅から約100km離れた街の映画館まで観に行く事を決意したんだから只事ではない。
…というのも、自分は中学の時分からクイーンの大フアンであり、1979年のツアーで北海道の札幌に上陸した時は約400kmも離れた田舎町から参上したほどだからだ。
上映開始当初は一週間程度の予定で日曜日は一日のみ。
自分と都合の良かった同世代の知人と共に上演1時間前にチケット購入に行ったのだが…先客は何と1人!…“自由席で良いんじゃね?”みたいな状況。
「おいおい唯一の日曜日にこれかよぉ~」
「まあ27年も前に解散したバンドの映画なんてこんなもんかねぇ」
「まだ上映まで時間あるし、少しは増えるだろ。」
知人とそんな話をしながら上映時間に入場してみると…おっ、客増えた…が、…自分達を入れて10名弱ってところか。
…クイーンも廃れたもんだ…。
そんな落胆も束の間、映画が始まると何もかも吹っ飛んだ。
初っぱな21世紀フォックスのジングルからブライアン・メイのギター・オーケストレイション…いきなりニヤニヤしてしまう。
劇内でのバンド、スマイルの演奏するドゥーイング・オール・ライトも良い感じでニヤニヤ。
フレディー「バンドに入りたい」ロジャー「その歯じゃ無理だ」…でニヤニヤ。
1stアルバムのレコーディング・シーンでガラクタを鳴らして遊んでいるメンバーにニヤニヤ。
コーラスのオーバーダビングで「何回歌わせるんだ!」とキレるロジャーにニヤニヤ。
オープンリールが透けてきて焦る状況にニヤニヤ。
「ラブ・オブ・マイ・ライフをオーディエンスが皆歌ってくれたんだ!」と喜々するフレディーにニヤニヤ。
フレディーの同性愛についての質問だらけの記者会見に頭を抱えるメンバーにニヤニヤ…
最初から最後まで“やっぱそうだったのね”が満載過ぎてニヤニヤし通しなのだ。
明らかにわかる事実との相違は作品の演出として置いといて、非常に良く出来ているドキュメンタリーだ。
劇と音楽の編集が絶妙に組み立てられていて、一映画作品としても感動出来る。
最も強調している“魂に響くラスト21分”が13分ちょいしかなくても全く気にならない秀作だと思う。
上映時間135分という数字を見ると少々長めに思えるが実際観てると「…えっ?もうエンディング?」みたいな感覚に陥る。
こんな面白い映画が日曜日に観客10人弱なんて勿体なさ過ぎる…!!
次の月曜日に行った知人の話だと「自分入れて4人でした」…って、泣けてくる状況。
…そんな感動と落胆を抱えつつ、約ひと月が過ぎ…
ある日、何となく世間話をしていて驚いた。
「確かボンゾーさんってロック好きだよね?うちの娘達さぁ、この前の日曜日になんちゃらいうロックの映画観てきたみたいよ。」
…ん?
何だ?…まさか??
「もしかしてボヘミアン・ラプソディー?」
「そうそう、それそれ!超満員だったって。普段ロックなんて聴きもしない娘たちなのに珍しい事もあるもんだ。」
一週間で終わるはずの上映期間が一ヵ月経ってもやってるって?
しかも自分が行った時は客が10人もいなかったのに…今は超満員??
いったいどーなってんの??
そのうちにネットニュースやTVの情報番組では毎日“クイーン”、“フレディー・マーキュリー”、“ボヘミアン・ラプソディー”。
マジでどーなってんの????
世間の話題だと10代20代のクイーンを知らない世代までが映画館に通い、再度媒体の売り上げが上昇しているとか。
この現象が続く昨今、自分のクイーン好きを知ってる人に言われた。
「“にわかファン”が増えすぎて腹立つしょ?」
いやいや、何をおっしゃいますか!
自分の好きな音楽を好む人が増えて喜ばしい限りですよ、ええ。
過去にも2005年辺りにもキムタク主演のドラマでクイーンの曲が起用された事で再ブレイクした経緯がある。
妙にクイーンを聴く若者が増えたり、突如ベストアルバムが発売されたりと良い流れがあった。
そんな波に乗り2002年ロンドン初演ミュージカル「ウィ・ウィル・ロック・ユー」の上陸。
そしてジョン・ディーコンは不在だったものの、ポール・ロジャースが加わった新生クイーンとして来日公演も果たした。
今回の映画からの波が前回の波を大きく上回る現象に感じられるのは主軸がフレディー・マーキュリーに置かれた事かと思う。
独特なキャラクターと生き様、バンド全体を含んだ独特な音楽性。
人物やバンドのフィクション映画である事が更にその独特な魅力を植え付けたのだと思う。
今回は再々ブレイクというより“新たなる大ブレイク”に思えて仕方ない。
何たってクイーン初体験でフアンになってしまった若人が圧倒的に多いからだ。
公開当時からのスタートした動員の上昇加減にも“本物”を感じる。
…この御時世、発展は早いが廃れるのも早いのは痛感している。
たぶん春には皆から忘れられてしまうであろう。
しかし今回は上辺の流行りものではなく、フレディーやクイーンの奥深い魅力を、多くの人達に知ってもらえたと信じたい。