その友人は心不全で倒れ、それ以来記憶を失った。
あらゆる知識を失い、奥さんの介護無くしては生きられなくなった。
倒れた場所が遠方の都市で、彼は妻子とそこに留まった。
心臓に爆弾を抱えてるので田舎暮らしは危険だと判断したのだ。
そこは連休の時くらいじゃなきゃ行けないほどの遠方だ。
記憶が戻る可能性は無に等しかった。
だが俺は可能性を追い求めて何年も通った。
彼の妻も、それに賛成してくれた。
その結果“覚え直す”という形で、また友人同士になれた。
…だが去年、また彼は倒れた。
「二度目は駄目だ」と言われていたのだが、奇跡的に命が繋がった。
病院で面会できると聞き、今年、また出向いたわけだ。
彼はベッドに寝ていた。
身体中に管が通され、あらゆる機械と繋がっていた。
しっかりと目は開いていた。
でも、何も見えないらしい。
手足が曲がったまま、指先は硬直し、常に小刻みに動いていた。
でも、何の意識もないらしい。
手を握り、名を呼んだ。
その途端、彼の顔色が変わり、動きが大きくなった。
「あれ?来てくれてるの分かるのかなぁ?」
彼の妻が呟いた。
でも、基本的には何も反応はなかった。
虚ろな目でゴーゴーと管に響く咳をするだけだった。
何と声を掛けて良いか分からなかった。
名を呼ぶしかなかった。
見ていて辛いだけだった。
でも、今も彼は友人だ。
何たって二度も友人になった奴なんだから。
うんうん。
返信削除心は通じているはず。
笑顔で握手!
>hana
返信削除ひとまず、その場ではオチャラケてきたけどね…。
まあ、気の持ちようだな。
あとはそれしかないっしょ!